2024年3月1日(金)~31日(日)の間は、外来診療は休診となります。
4月1日(月)以降の診療につきましては、現在の場所で新たな医療機関として、内科外来・眼科外来・泌尿器科外来・人工透析・健診センターの診療を行う予定です。(入院診療は行いません。)
<鼠径ヘルニア(脱腸)でお困りの方は、お近くの診療可能な医療機関を受診お願い致します。>
鼠径ヘルニア・脱腸とは
鼠径(そけい)部とは、太もももしくは足のつけねの部分のことを言い、ヘルニアとは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
鼠径ヘルニアとは、お腹の中の腹膜や腸の一部が、鼠径部の筋膜の間から皮膚の下に出てくる下腹部の病気です。一般には「脱腸」と呼ばれています。
鼠径ヘルニアは子供の病気と思われがちですが、むしろ成人に多く、手術以外の治療方法がありません。痛みも少なく日帰り治療や短期入院で済む新しい手術方法が普及してきており、生活の質を考慮すれば、積極的に治療した方がよい病気です。
鼠径ヘルニア(脱腸)の原因・症状
立った時やお腹に力を入れた時に鼠径部の皮膚の下に腹膜や腸の一部などが出てきて柔らかい膨らみができます。
普通は指で押さえたり横になると引っ込みますが、小腸などの臓器が出てくると不快感や痛みを伴います。
膨らみが急に硬くなったり押さえても引っ込まなくなることがあり、お腹が痛くなり吐いたりします。これをヘルニアの嵌頓と言い、急いで手術をしなければ命にかかわります。
鼠径部にはお腹と外をつなぐ筒状の管(鼠径管)があり、男性では睾丸へ行く血管や精管(精子を運ぶ管)が、女性では子宮を支える靱帯が通っています。
年をとってきて筋膜が衰えてくるとこの鼠径管の入り口やその近くの腹壁の弱い場所が緩んできます。
お腹に力を入れた時などにここに腹膜が出てくるようになり、伸びた腹膜の中にお腹の中の組織が出てくるようになります。
鼠径ヘルニア(脱腸)になりやすい人
鼠径ヘルニアは、乳幼児の場合はほとんど先天的なものですが、成人の場合は加齢により身体の組織が弱くなることが原因で、特に40代以上の男性に多く起こる傾向があります。
乳幼児でも中高年でも鼠径ヘルニアの患者様の80%以上が男性ですが、これは鼠径管が女性は男性より小さく、比較的腸が脱出しにくいためと考えられています。
また、40代以上では腹圧のかかる仕事に従事する人に多く見られます。便秘症の人、肥満の人、前立腺肥大の人、咳をよくする人、妊婦も要注意です。
鼠径ヘルニア(脱腸)の治療
成人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。また、有効な薬や運動療法もなく、手術のみが治せる治療です。
ヘルニアバンド(脱腸帯)を使用している方もいますが、これは鼠径ヘルニアを治すものではなく、外から押さえることで一時的に鼠径ヘルニアの症状を軽くする対症療法です。最近では、ヘルニアバンドは圧迫により皮膚障害や精巣(睾丸)萎縮を招くおそれがあるとされておりお勧め出来ません。
鼠径ヘルニアは良性の病気ではありますが、放置すると嵌頓して緊急手術が必要になることもあります。嵌頓は鼠径ヘルニア患者様に年間1%程度の確率で起こると考えられていますので、嵌頓する前に早めの手術治療を受けましょう。
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術について
1.腹腔鏡下手術
腹腔鏡(細い管の先端にカメラが付た手術器具)を使用して手術を行う方法を言います。
実際には、お腹を切開して小さい穴を開け、その穴から筒状の器具を通じて、腹腔鏡とよばれるカメラや鉗子、電気メスなどを挿入します。炭酸ガスでふくらましたおなかのなかで操作を行い、カメラで捉えた映像をモニターに映し出しながら手術を進める方法です。
腹腔鏡手術ではモニターに映った患部を見ながら鉗子や電気メスを遠隔で駆使するため、開腹手術より時間がかかることが多いですが、拡大視効果や気腹圧により出血量は少なくすむことが多いといわれています。
- TAPP法
- 鼠径ヘルニアの場合は5mmから12mmの穴を3ヶ所開けます。そのうちの1つの穴から腹腔鏡を入れてお腹の中を映し、別の2つの穴から入れた道具を操作して手術を行います。
- おなかの中では、腹膜を剥離し、メッシュをヘルニアの穴(内側から見るとくぼんでみえます)の周囲に広げて、タッカーという器具で固定します(最近では、固定を必要としないメッシュも使用しています)。最後にはがした腹膜を縫合します。
その他、TEP法や再発鼠径ヘルニアに対するハイブリッド手術、若年者へのLPEC法も状況により選択しています。
2.鼠径部切開法
鼠径部を切開して、ヘルニアの出口をメッシュで覆ったり、組織を糸で縫ったりして塞ぐ
- 従来法
- 鼠径管の入り口を縫い縮め、腹壁の筋肉や筋膜を縫い合わせて補強します。これらの方法では、縫い合わせた部分につっぱりが生じ、術後の痛みの原因になったり、つっぱりの部分が裂けて再発することがあります。
- 術後の2~3日は安静にして、5~7日の入院が必要です。小児やメッシュが使用できない方に行います。
- リヒテンシュタイン法
- 鼠径管後壁、内腹斜筋、腹直筋前鞘、恥骨結節をメッシュで広く被覆する術式です。欧米で広く普及している術式で、安全に施行可能であり、さまざまなタイプの鼠径ヘルニアに施行されています。当院では縫合固定の必要ないメッシュを積極的に使用し、術後合併症を減らすよう努めています。
- 手術時間は短く、手術創の大きさは4-5cm程度で術後の痛みも軽く、再発率も従来法より低くなっています。また最小限の固定により術後の痛みや神経痛のリスクも軽減されます。手術時間は約30-60分です。
- ダイレクトクーゲル法
- 形状維持リングに縁取られたポリプロピレン製の楕円形メッシュで筋膜の内側から腹膜のすぐ外側を広く覆い、鼠径部の弱い部分の全体を一度に補強して腸などが出てくるのを防ぎます。ポリプロピレンメッシュは50年程前から使用され、体内使用の安全性は確立されています。
- 手術創の大きさ、術後の痛み、再発率もリヒテンシュタイン法と同様です。
- メッシュプラグ法
- ポリプロピレン製のプラグを筋膜の弱い部分に入れて、ヘルニアの出口を塞ぐ方法です。
- ダイレクトクーゲル法と同様の手術成績です。
- 現在、長津田厚生総合病院では鼠径部切開法の標準術式としてリヒテンシュタイン法を最も多く行っています。
その他、リヒテンシュタイン法やマーシー法なども状況によって使い分け施行しています。
手術方法の比較
腹腔鏡下手術 | 鼠径部切開法 | |
---|---|---|
術後の痛み | 少ない | 強い |
創 | 小さい | 大きい |
両側ヘルニアの同時手術 | 可能 | 不可能 |
長津田厚生総合病院
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