最終更新日:

内痔核(いぼ痔)について
痔は、「生活習慣病」だと言われる場合もあるように、生活習慣の改善によって、ある程度は予防・治癒することが出来ますが、例えば排便時などの出血を痔に伴う症状だと勝手に思い込んでいると、癌などの病気を見過ごしてしまう危険性もあり、出血などの症状が見られる場合には、きちんと病院で検査することをお勧めします。
痔は、軽い症状の場合には、生活習慣の改善、薬などで治療することも可能ですが、症状によっては手術をしないと治癒しない場合もあります。長津田厚生総合病院の外科(消化器病センター)では、痔の手術についても積極的に行っています。
痔には、主にいぼ状のはれができる「いぼ痔(痔核)」、肛門の皮膚が切れる「切れ痔(裂肛)」、肛門に膿のトンネルができる「痔瘻」の3種類があります。
痔核は、肛門部への過度の刺激・血行障害(肛門部のうっ血)によって発生するものです。
痔核はそのできる場所により内痔核と外痔核とに分けられています。
痔核発生の原因には、便秘等による排便時のいきみやゴルフのスウィング等スポーツ時のいきみ、長時間の座りっぱなしや立ちっぱなしの姿勢、重いものを運んだりする時のいきみ、アルコール類や刺激物(胡椒、からし、わさび等)の過度の摂取などがあります。
内痔核(いぼ痔)の症状と治療
内痔核の場合、普通は痛みがありません。排便の前後で痔核にうっ血(血がたまった状態)が起こり、便などにより痔核表面にキズがつくと出血が起こります。出血の程度は様々で、紙に付く程度からほとばしるようなものまであります。また血の色は時間が経つと黒くなりますが、肛門に近いために真っ赤な色です。
痔核がひどくなると脱出が起こるようになります。その程度の目安としては、脱出しても時間が経つと自然と戻るのか、指で押して戻すのかがポイントになります。内痔核の程度区分にはゴリガーの分類が一般的に用いられ、病状が4段階に分けられています。

程度区分 | 病状 | 治療 |
---|---|---|
内痔核I度 | 痔核が肛門内でふくらんでいるだけで、排便時に肛門の外へ出ない状態。排便時に出血するが痛みはない。 | 便通の改善をはかり、坐剤を使用する。 |
内痔核II度 | 出血とともに痔核が排便時に肛門の外へ出てくるようになるが、排便後は自然に元に戻る状態。痛みも出てくる上に残便感があることもある。 | 坐剤を使用する。 |
内痔核III度 | 排便時に肛門の外に出た痔核が、自然には肛門内に戻らず、指などで押し込まないと戻らない状態。 | 坐剤を使用し、長い経過例は手術を選択する。 |
内痔核IV度 | 痔核が常に肛門の外に出たままで、指などで押し込んでも肛門内に戻すことが出来なくなった状態。脱出したものが肛門括約筋で締められて腫脹し、まったく元へ戻らなくなってしまう(嵌頓)と激しい痛みを生じる。 | 手術療法を選択する。 |
内痔核(いぼ痔)の手術
-
内外痔核は、根部の血管が多くの場合、右前・右後・左の三枝に分かれて流れてきているため、この3ヶ所にでき易くなっています。痔核の手術では、この3ヶ所で血管を根元で結紮し痔核を切除します。
切除創の口側(奥の方)は閉じ、肛門側(手前側)の創は開放したままとします。これはドレナージと言われ、内側の創から分泌された液が中に付着したり溜まったりするのを防ぎ、分泌物を外に導きます。
このドレナージを作ることで、創は早くきれいに治ります。
ALTA(アルタ)療法のご紹介
中国で内痔核の硬化療法剤として承認されている「消痔霊®」の添加物を一部変更した内痔核硬化療法剤「ジオン®注」が、平成17年3月に日本でも承認されました。ジオンは硫酸アルミニウムカリウム及びタンニン酸を主成分とした薬液で、内痔核に注入すると硫酸アルミニウムカリウムによって痔核の間質に炎症を起こし、痔核の硬化・退縮を起こします。
従来は手術による治療が行われていた重度(IV度)の内痔核にも治療効果が認められています。手術に比べ、治療後の痛みや出血といった合併症が少なく治療期間が短くて済むという利点があります。
注射の方法は、従来の硬化療法とは異なり、「四段階注射療法」というより高度な手技が必要となります。1つの痔核について、4つの部分(上極部粘膜下層・中央部粘膜下層・粘膜固有層・下極部粘膜下層)に分割して投与します。
脱出の症状には約100%、出血には約90%の効果があります。ただし永続性については結紮切除には及びません。II度の痔核ではかなり良い成績ですが、III度の痔核では約16%の再発率が報告されています。
また、全く副作用がない訳ではありませんので、十分に医師から説明を聞いて納得した上で治療を受けてください。この療法の効果には速効性があり、手術と従来の硬化療法との中間に位置付けされるもので、内痔核治療の新しい選択肢として注目されています。
長津田厚生総合病院でもこの治療を受けることが出来ます。内痔核で悩んでおられる方は是非一度ご相談にお越しください。
内痔核(いぼ痔)術後の経過
手術翌日から歩行していただき食事も始まります。排便後は温水洗浄機能を利用していただきます。
出血などの術後合併症がないことを確認した上で、術後、通常は翌日から3日程(術後の経過や体調等によっては1週間程度)で退院となります。
内痔核(いぼ痔)の日帰り手術を行っています。
肛門疾患の日帰り手術は可能なのですか?
日帰り手術とは、手術を行った当日自宅に戻り、自宅で術後を過ごすことができるものです。
以前は必ず入院が必要であると考えられていた病気にも、最近では日帰りで治療行う施設が増えてきています。
当院でも鼠径ヘルニアに対しては以前から日帰り手術を行っており、良好な成績をあげています。この経験をいかし、肛門疾患へ日帰り手術の適応を拡大してきました。
肛門疾患の場合、日帰り手術に対する不安の大きなものとして、術後の痛みと術後出血の二点があげられます。
内痔核(いぼ痔)は良性疾患でもあり、術後の痛みや出血がある程度コントロールできれば、日帰り手術での対応が可能となります。
当院では、麻酔科専門医師による痛みに対する専門治療と、ALTA注射療法を単独もしくは結紮(けっさつ)切除との併用で用いるといった手術の工夫で、痛みや出血のリスクを最小限にする試みを行い、日帰り手術を可能にしてきました。
目帰り手術のメリット
- 手術を受けたその日のうちに帰宅できるので、学校や仕事を長く体む、以前からの予定を大幅に変更しなければならないといった日常生活への影響を最小限にすることができます。
- 入院のわずらわしさやストレスを感じることなく、術後は慣れ親しんだ自宅で療養できます。
- 入院費用が不要なため、手術にかかる費用を少なく抑えることができます。
日帰り手術の実際
まず、年齢、基礎疾患(糖尿病、心疾患、抗血小板薬の内服など)、生活環境により適応を判断します。
-
1
術前検査
特に問題がなければ1回の通院のみで終えられます。
手術に当たって全身状態のチェックが必要です。
手術が安全に行えるかどうかを判断するために血液検査・尿検査・心電図・レントゲン検査などを行います。特に問題なければ外来での手術予定を決めていきます。 -
2
手術
当院での日帰り肛問手術の麻酔は、静脈麻酔、仙骨硬膜外(こうまくがい)ブロックと局所麻酔をバランスよく併用しながら行うので、患者様が痛みを感じることなく、かつ眠っている間に手術が終了します。
そのため、手術中に痛みや不安を感じる心配はありません。また、麻酔は麻酔科専門医師が専属で担当するため、手術の状況をにかかわらず安全です。
手術は30分ほどで終了します。
術後は、静脈麻酔の効果をしっかりと覚ますために、数時間ほど病棟のベッドで安静にしていただきます。
出血のないこと、疼痛の管理が自宅でも十分に可能なことを確認しご帰宅していただきます。
不安がある場合や自宅での療養が難しい場合には、入院しての治療を行うことも可能です。
また、併存疾患を多くお持ちの場合は、総合病院である強みをいかし、各診療科と協力しながら総合的かつ安全に治療を進めていくこともできます。 -
3
術後の通院
特に問題がなければ1回の通院のみで終えられます。
手術に当たって全身状態のチェックが必要です。
手術が安全に行えるかどうかを判断するために血液検査・尿検査・心電図・レントゲン検査などを行います。特に問題なければ外来での手術予定を決めていきます。
代表的な日帰り肛門治療
1.結紮(けっさつ)切除法
内痔核(いぼ痔)に対して一般的に行われる方法で、痔核を切除し、出血を予防する為、痔核切除後の根部を結紫する方法です。切除した粘膜面を外側に半閉鎖します。
2.ALTA注射療法(切らない治療)
痔核に対する注射療法の一つで、ALT(硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸注射液)(ジオンR)という薬を痔核に注射をして痔核を硬化縮小させてしまう方法です。
術後出血の心配はなく、術後の生活制限も殆どありません。効果は痔核の状態によって様々で、納得のいく効果が得られないこともあります。
上記ふたつの方法を組み合わせ、できるだけ切除部分を少なくして、出血や疼痛のリスクを最小限にしながら、効果を最大限に発揮する工夫をしています。
内痔核(いぼ痔)のことでお困りの方
当院の外科(消化器病センター)(肛門専門)へお気軽にご相談ください。
長津田厚生総合病院・外科(消化器病センター)(肛門専門)のご案内
※遠方の方は最寄りの外科や肛門科にご相談ください。